雑誌の企画で全国の元気な農業者を毎月訪ねているのですが、離農の急速に進む農村に都会から行って人生を充実させている人もたくさんいて心強く感じます。都会では六十歳定年で職場を去った人が余っていますが、もうすぐ定年を迎える団塊の世代に対して、これからは自分を生かす多様な生き方があるのではないかと問いたいと思います。
東京で小学校の先生をしていた三十二、三歳の人が、いま夫婦で北海道浜中町の研修牧場で酪農を学んでおり、離農する人の後に入ります。子供を育てる大切な時間は都会より田舎の方が良いと考えての決断ですが、研修期間中は夫婦で月収約二十六万円。子供は十分育てていけると言います。
沖縄の与那国島で郵便局に勤めていた友人は五十五歳で早期退職し、今は二十四の牧場で牛を飼い、サトウキビを栽培しています。息子も大学を卒業して戻り、奥さんは泡盛を造っています。過疎で土地が余っているのを生かしているわけです。
岩手県花巻市では農協がリードしてヒエやアワなどの雑穀を作り、ブームになりました。徳島県上勝町ではおばあちゃんたちが紅葉や柿、桜の葉を売り月収何十万円と稼いでいます。農協の職員がパソコンで受注システムを作り、おばあちゃんたちも操作を習得し可能になりました。
農協や自治体は、外部の人を受け入れる工夫を涙ぐましいほどにいろいろやっている。ちょっとビジネスの感覚を注入することで、農村生活に新しい可能性が開けるのではないでしょうか。そういう場所で団塊の世代が、もう一度自分の能力を生かすことをおすすめしたいと考えます。(講演の要旨)
〜日本経済新聞 朝刊 2005年10月10日(日)広告特集「ふるさと回帰フェア2005」より〜
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